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京都地方裁判所 昭和58年(行ウ)16号 判決 1985年6月12日

京都市右京区梅津後藤町四番地三

原告

石原祥伍

訴訟代理人弁護士

高田良爾

京都市右京区西院上花田町一〇番地

被告

右京税務署長

吉田稔

指定代理人検事

失野敬一

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告

被告が、昭和五六年九月九日付で原告に対してした、原告の昭和五三年分ないし昭和五五年分(以下本件係争年分という)の所得税更正処分(以下本件処分という)のうち、昭和五三年分の総所得金額(事業所得金額)が一二八万円、昭和五四年分の総所得金額が二五〇万円、昭和五五年分の総所得金額が一八〇万円をいずれも超える部分を取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決。

二、被告

主文同旨の判決。

第二、当事者の主張

一、本件請求の原因事実

1  原告は、肩書住所地で手描友禅業を営む白色申告納税者であるが、本件係争年分の確定申告を被告に対してしたところ、被告は、昭和五六年九月九日付で本件処分をした。そこで、原告は、異議申立、審査請求をしたが、その経緯と内容は、別表1記載のとおりである。

2  しかし、本件処分には、次の違法がある。

(一) 被告の部下職員は、本件税務調査をするについて、事前通知、理由開示をしなかった。そして、被告は、このような違法な本件税務調査に基づいて本件処分をした。

(二) 被告は、本件処分をするについて、原告の所得金額を過大に認定した。

3  結論

原告は、被告に対し、本件処分のうち、請求の趣旨第一項掲記の金額を超える部分の取消しを求める。

二、被告の答弁

本件請求の原因事実中1の事実は認め、2の主張は争う。

三、被告の主張

(本件税務調査について)

被告は、昭和五六年五月二〇日から同年九月三日までの間、数回にわたって部下職員を原告方に臨場させた。

被告の部下職員は、本件税務調査をするため、原告に対して事業所得の計算の基礎となる帳簿書類などの提示、説明を求めたが、原告は、外注費及び給与を明らかにしたにとどまり非協力的態度に終始した。

そこで、被告は、やむをえず反面調査のうえ、本件処分をした。

なお、原告の主張する本件税務調査の事前通知、理由開示は、本件処分の適法要件ではない。

(本件処分の正当性について)

1 原告の本件係争年分の事業所得金額は、別表2のとおりであり、それを下廻るのである。

年分 被告主張額(円) 本件処分の額(円)

昭和五三 二七六万三、八二八 二三五万三、五五〇

昭和五四 六一六万三、二九一 四三四万九、〇四九

昭和五五 七二七万五、四〇七 五八六万三、三〇二

2 別表2の<2>売上原価について

<2>売上原価の内訳は、別表3記載のとおりである。

3 別表2の<1>売上金額について

(一) 同業者の売上原価率の算出

被告は、右京税務署管内の青色申告納税者のうちから、次の条件のものを選出した。

<1> 染色業のうち手描友禅業を営んでいること。

<2> 右<1>以外の事業を兼業していないこと。

<3> 売上原価の額が、昭和五三年分は、四〇万円から一五〇万円まで、昭和五四年分は、一八〇万円から五五〇万円まで、昭和五五年分は、二八〇万円から八七〇万円までの範囲内であること。

なお、右売上原価の金額の範囲は、原告の売上原価の金額を基準とし、上限を約一五〇パーセント、下限を約五〇パーセントとしたものである。

<4> 配偶者が青色事業専従者として事業に従事している者であること。

<5> 年間を通じて、継続して事業を営んでいること。

<6> 不服申立又は訴訟係属中の者でないこと。

このようにして選出した同業者を整理したものが、別表4の1ないし3であり、同業者の売上原価率は、次のとおりになる。

年分 同業者の平均売上原価率

昭和五三 一八・六四

昭和五四 三二・五二

昭和五五 三七・六五

(二) この同業者売上原価率を適用して、原告の売上金額を算出する。

昭和五三年分

(売上原価) (同業者の売上原価率) (売上金額)

九六八、七二〇円÷〇・一八六四=五、一九六、九九五円

昭和五四年分

(売上原価) (同業者の売上原価率) (売上金額)

三、六一七、八六〇円÷〇・三二五二=一一、一二五、〇三〇円

昭和五五年分

(売上原価) (同業者の売上原価率) (売上金額)

五、七六七、〇四五円÷〇・三七六五=一五、三一七、五一六円

4 別表2の<4>一般経費について

<4>一般経費の内訳は、別表5記載のとおりである。

5 別表2の<6>特別経費について

<6>特別経費の内訳は、別表6記載のとおりである。

なお、別表6の建物減価償却費の内訳は、別表7記載のとおりである。

6 別表2の<8>専従者控除額について

原告の昭和五三年分及び昭和五五年分の事業専従者控除額は、所得税法五七条三項の規定により、右両年分とも四〇万円である。

なお、昭和五四年分は、同年分確定申告書に同条五項に規定する事項の記載がないから、同条三項の規定の適用がない。

四、被告の主張に対する原告の反論

1  別表2の<2>売上原価の合計額、<4>一般経費、別表6の地代の額は認める。

2  原告の本件係争年分の売上金額は、別表8記載のとおりであるから、売上金額は、この実額によるのが至当である。

3  別表6の支払利息は、建物建築資金の借入金に係る支払利息の全額であり、六〇パーセントにする理由がない。

年分 支払利息(円)

昭和五三 四八万一、四三七

昭和五四 七二万五、八〇七

昭和五五 六六万六、五一三

4  別表7の建物減価償却費は、原告の事業専用割合を六〇パーセントにしているが、事業専用割合は、一〇〇パーセントとして計算されるべきである。

年分 建物減価償却費(円)

昭和五三 三二万七、〇四八

昭和五四 五六万〇、六五三

昭和五五 五六万〇、六五三

5  本件同業者は、友禅業全体行程中の主として挿し友禅を業とするものであるから、原告の業態とは、類似性がない。すなわち、原告の本件係争年分の業務内容は、次のとおりである。

年分 挿し友禅(%) ローケツ染(%) 引染(%)

昭和五三 五〇 三〇 二〇

昭和五四 五〇 二〇 三〇

昭和五五 四〇 一〇 五〇

挿し友禅とは、手描友禅ともいわれ、ゴム糸目の中を色で挿すものをいい、ローケツ染とは、ローを使って染め上げるものをいい、引染とは、一反の白生地に染料を挿しながら色を引いていくものをいうのであって、三者は、その手法、工程を異にしている。

6  被告は、同業者売上原価率を算出するについて、同業者の売上原価中給料賃金のうち配偶者に支給された青色専従者給与分を除外している。しかし、配偶者も、労務を提供して売上に寄与したのであるから、配偶者給与分も含めて青色専従者給与を算出するのが正当である。そして、その額は、別表9記載のとおりである。

そうすると、同業者売上原価率は、次のとおりである。

年分 同業者売上原価率(%) 被告の主張(%)

昭和五三 三六・二三 一八・六四

昭和五四 四三・七五 三二・五二

昭和五五 四七・一三 三七・六五

五、原告の反論に対する被告の反駁

1  売上金額の実額主張について

原告の主張する別表8の売上金額は、原告が小切手で受け取ったり銀行振込による売上げばかりであって、現金売上げは昭和五五年分の番号12・13にすぎない。したがって、別表8の売上金額は、現金売上げを記載していない点で不正確であり、到底別表8の売上金額によって原告の本件係争年分の売上金額の実額とするわけにはいかない。

2  建物減価償却費、支払利息について

原告は、昭和五三年六月、増改築をしたが、北面は旧外壁、窓等をそのままにして更にその外側に窓付きの外壁を建築し、新旧の外壁の間はセメント舗装の土間のままで、天井に照明設備がなされ、また、洗濯物干しが設置されている程度であった。しかしながら、右増改築では、二階部分の面積を大幅に拡大したことに伴い、従来の屋根を全部撤去して全面的に造り替えたほか、住宅部分の外壁についても構造の変更はないものの増築部分との調和を図るためのモルタルの塗り替えと塗装(南面)が施こされ、また、二階住宅部分と作業場との仕切り部分も化粧板の張付け及びガラス戸の新設等が行われている。

そこで、これを図面(別表10添付図面)に書き、建物増改築に伴う事業用部分の計算をすると、別表10記載のとおり、七〇・一七パーセントになるから、被告は、八〇パーセントが事業専用部分であると認める。

そして、原告は、右建物増改築に六六〇万円を支払ったにすぎず、八八九万九、二八五円ではないことが、後日判明した(乙第三〇号証の七、二二、同第三一、三二号証参照)。

そうすると、原告の本件係争年分の建物減価償却費の計算は、別表11に記載された金額であり、別表7の額を下廻るのである。しかし、被告は、別表7により、別表11より多くの金額を建物減価償却費として認める。

右増改築費用は、六六〇万円であり、その事業用割合は、八〇パーセントであるから、原告が建物建築資金の借入金としている一、〇〇〇万円の支払利息のうち五二・八パーセントが、必要経費となるにすぎない。

(算式)

<省略>

そうすると、原告の主張する京都信用金庫壬生支店に本件係争年分中に支払われた利息のうち、その五二・八パーセントが、必要経費として計上できる。そして、その額は、次のとおりである。

年分 <イ> 原告主張額(円) <ロ> <イ>のうち必要経費相当額(<イ>×五二・八パーセント)(円)

昭和五三 四八万一、四三七 二五万四、一九九

昭和五四 七二万五、八〇七 三八万三、二二七

昭和五五 六六万六、五一三 三五万一、九一九

そして、この金額は、別表6の支払利息を下廻る。そこで、被告は、別表6の金額を必要経費として認めることにする。

3  本件同業者の類似性について

原告の手描友禅の売上割合は、昭和五三年分八五・九六パーセント、昭和五四年分八五・三四パーセント、昭和五五年分八一・五八パーセントである(別表12の1ないし3参照)。

そうすると、原告は、主として手描友禅すなわち挿し友禅を営むものとしてよく、被告の選出した同業者とは類似性がある。

原告は、同業者の酷似性又は合致性を要求するもので、それでは、推計課税が不可能に陥る。同業者中には、営業状況に差があるのは当然であり、その平均値を求めるのであるから、同業者間に通常ある程度の営業状況の差異は、無視できるし、納税者の個別的営業条件のいかんは、それが当該平均値による推計自体を全く不合理ならしめる程度の顕著なものでない限り、これを斟酌する必要がない。

4  配偶者の専従者控除は、白色申告納税者の場合には、四〇万円に限定されているのであるから、同業者率の計算に配偶者の専従者給与を全額人件費として算入するとすると、白色申告納税に認められた四〇万円の控除わくを事実上撤廃し、青色申告者と同一に取り扱うことになり、それが不当であることは、いうまでもない。

5  原告の本件係争年分の必要な生活資金等を算出すると、別表13記載のとおりの額であり、原告主張の所得金額は、全く不自然、不合理であることが明白である。

第三、証拠関係

本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、ここに引用する。

理由

一、本件請求の原因事実中1の事実は、当事者間に争いがない。

二、本件税務調査の違法について

本件に顕われた証拠を仔細に検討しても、本件税務調査に原告主張の違法事実があったことが認められる証拠は、どこにもない。

したがって、原告のこの主張は、採用しない。

三、原告の本件係争年分の事業所得について

1  別表2の<2>売上原価の合計額、<4>一般経費、別表6の地代の額は、いずれも当事者間に争いがない。

2  原告主張の売上金額について

原告主張の別表8の売上金額(昭和五五年分の12、13をのぞく)は、成立に争いがない乙第一号証の裁決書の中で原告の本件係争年分の総収入金額(売上金額)として認定された金額を記載したものである。

しかし、原告は、異議審理庁に対し、昭和五四年分及び昭和五五年分の収支計算書、請求書及び領収書の一部を提出したにすぎず(同号証によって認める)、本件訴訟でも、実額主張をしながら、それを裏付ける売上元帳や売上伝票など原始資料を一切証拠として提出しておらず、被告から、現金収入として昭和五五年分の12、13の二口があることを指摘され、それを売上金額に加算するといった失態を演じている(このことは、弁論の全趣旨によって明らかである)。そうして、原告は、その本人尋問で、この二口以外には、絶対現金取引はないと供述している。

このようにみてくると、別表8の売上金額が、原告の本件係争年分の実額のすべてであるとしてしまうわけにはいかない。原告としては、それを裏付ける原始資料を全部提出してその立証をしなければならず、その挙に出ない以上、被告主張の推計方法によって売上金額を推計するほかはない。

3  同業者の売上原価率について

(一)  証人西野但の証言によって成立が認められる乙第五、六号証や同証言によると、被告が、被告主張の条件のもとに右京税務署管内の手描友禅業を営む青色申告納税者を抽出して整理したものが、別表4の1ないし3であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

そうすると、同業者の平均売上原価率が、被告主張の率であることは、別表4の1ないし3から計算上明らかである。

(二)  原告は、挿し友禅のほかにローケツ染、引染を営んでおり、本件同業者は挿し友禅を営むものであるから、営業形態を異にし、同業者としての類似性を欠くと主張している。

しかし、公務員が職務上作成したものであるから成立が認められる乙第一八ないし第二〇号証、同第二二号証によると、原告は、税務職員に対し、挿し友禅をしており、ローケツ染、引染は、少ししかしていないと述べており、税務職員は、その事実を取引先で確認したことが認められる。それにも拘らず、原告は、その本人尋問で、昭和五三年分は、挿し友禅五割、ローケツ染三割、引染二割、昭和五四年分は、挿し友禅五割、ローケツ染二割、引染三割、昭和五五年分は、挿し友禅四割、ローケツ染一割、引染五割と述べて、前言をひるがえし、都合がよいと思われる訴外株式会社更千の証明書(甲第二一号証、同第二四号証)、訴外株式会社香雲の証明書(甲第二二号証)を提出している。しかし、右原告本人尋問の結果は、極めて抽象的に割合を述べているにすぎず、右証明書も、その真実性を欠く。

そのうえ、被告が作成した別表12の1ないし3によると、原告の手描友禅(挿し友禅)の売上割合が、八〇パーセントを超えることが明らかである。

このようにみてくると、原告は、主として挿し友禅を営み、ローケツ染、引染も少し営んでいたとするのが、原告の営業実態に合致するとしなければならない。

したがって、被告が、同業者として手描友禅業を営むものを抽出したことは、正当であり、原告の信義を欠く非難は、当らない。

(三)  原告は、同業者売上原価率を算出するについて、同業者の支払った妻に対する青色専従者給与を、別表4の1ないし3の<7>に含めて計算すべきであると主張している。

しかし、所得税法五六条は、「居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む・・・事業所得・・・を生ずべき事業に従事したこと・・・により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る・・・事業所得の金額・・・の計算上、必要経費に算入しないもの」としている。これが原則であるが、これには、次の例外規定がある。

まず、「青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族でもっぱらその居住者の営む・・・事業に従事するものが・・・給与の支払を受けた場合には、・・・その居住者のその給与の支給に係る年分の・・・事業所得の金額・・・の計算上必要経費に算入」される(同法五七条一項)。

次に、「居住者と生計を一にする配偶者その他の親族でもっぱらその居住者の営む・・・事業に従事するものがある場合には、その居住者のその年分の当該年分の当該事業に係る・・・事業所得の金額・・・の計算上、各事業専従者につき、次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を必要経費とみなす。一、四〇万円 二、省略」(同条三項)。

そうすると、いわゆる白色申告に係る居住者が、その事業を営むについて、配偶者に給与を支給しても、それは、居住者の必要経費にはならず、申告により四〇万円の必要経費の控除が受けられるにとどまるのに対し、青色申告に係る居住者が、その事業を営むについて、配偶者に給与を支給した場合、専従者給与額は、居住者の必要経費になるわけで、税法上、白色申告に係る居住者と、青色申告に係る居住者とは、この点で全く異った取扱いを受ける。

そうすると、原告は、白色申告に係る納税者であるから、青色申告に係る同業者の支払った専従者の給与を除外して計算しないと、原告が、青色申告に係る納税者と同じ扱いを受けてしまい、不合理である。原告としては、配偶者その他の親族に支払った給与があるのであれば、必要経費として四〇万円の控除を受ける方法があるのであるから、これによって、専従者の給与を除外して所得率を算出することと辻褸が合うのである。

このようなわけであるから、原告のこの主張は採用しない。

4  別表2の<1>売上金額について

別表2の<2>売上原価は、当事者間に争いがないから、これに同業者の売上原価率を適用して<1>売上金額を算出すると、被告主張の額がえられることは、計算上明らかである。

5  別表2の<6>特別経費について

(一)  別表6の地代については、当事者間に争いがない。

(二)  建物減価償却費について

原告が、昭和五三年六月、増改築した後の原告の肩書住所地の家屋の使用状況が、別表10の添付図面どおりであることについて、原告は、明らかに争わないから自白したものとみなす。

そうすると、事業専用部分は、別表10記載のとおり七〇・一七パーセントになる。

原告は、全部が事業用であると主張し、原告本人尋問の結果中にも、これにそう供述部分があるが、原告には、妻と子供二人がある(成立に争いがない乙第二ないし第四号証による)のに居住部分が全くないとするのは、まことに不自然な主張であり、被告がいうとおり約七〇パーセントが事業専用部分であるとするのが、社会通念に合致するとしなければならない。

原告が、この増改築のため支出した費用は、六六〇万円であることが、弁論の全趣旨によって成立が認められる乙第三〇号証の七、二二、同第三一、三二号証によって認められ、この認定に反する証拠はない。

そうすると、建物減価償却費は、別表11記載のとおりになることは、計算上明らかである。しかし、被告は、原告に有利な別表7の額を主張しているから、それに従うことにする。

(三)  支払利息について

原告が、本件係争年分中に、京都信用金庫壬生支店に支払った支払利息が、原告主張どおりであることは、当事者間に争いがない。

原告は、この全部が、特別経費であると主張しているが、支払利息に係る資金のうち被告の主張する五二・八パーセントが事業用分の支払利息に該当するとするほかはない。したがって、被告主張の支払利息を正当として認容する。そうして、被告は、原告に有利な別表6の額を主張しているから、それに従うことにする。

(四)  まとめ

原告の本件係争年分の特別経費として、被告の主張する別表6(別表2の<6>)記載の額を認める。

6  別表2の<8>専従者控除額について

前掲乙第二ないし第四号証によって、被告主張どおりの額を認める。

7  原告の本件係争年分の事業所得金額の計算について

以上説示した額を基にして、被告主張の計算方法によって、原告の本件係争年分の事業所得金額を計算すると、別表2の<9>に記載された金額になることは、計数上明らかである。そこで、これを、本件処分の額と対比すると次のとおりである。

年分 裁判所の認容額(円) 本件処分の額(円)

昭和五三 二七六万三、八二八 二三五万三、五五〇

昭和五四 六一六万三、二九一 四三四万九、〇四九

昭和五五 七二七万五、四〇七 五八六万三、三〇二

そうすると、本件処分は、裁判所の認容額の範囲内であるから、本件処分には、原告が主張する原告の事業所得金額を過大に認定した違法はない。

四、むすび

本件処分には、原告主張の手続的瑕疵はないし、原告の本件係争年分の事業所得金額を過大に認定した違法がないから、原告の本件請求は、失当として棄却を免れない。そこで、行訴法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 古崎慶長 判事 武田多喜子 判事補 長久保尚善)

別表1

申告・更正等の経過

<省略>

別表2

事業所得金額の計算

<省略>

別表3

売上原価の明細

<省略>

別表4の1

同業者の売上原価率(昭和53年分)

<省略>

別表4の2

同業者の売上原価率(昭和54年分)

<省略>

別表4の3

同業者の売上原価率(昭和55年分)

<省略>

別表5

一般経費の明細

<省略>

別表6

特別経費の明細

<省略>

別表7

建物減価償却費の明細

<省略>

別表8

原告の売上金額(原告主張)

<省略>

別表9

同業者の配偶者に対する青色申告専従者給与額

<省略>

別表10

建物増改築に係る事業用部分の計算

<省略>

(注)「共用部分」とは、「事業用」「住宅用」の両者に関係する部分である。

建物増改築に係る事業用部分の計算

<省略>

別表11

建物減価償却費の明細

<省略>

別表12の1

手描友禅の売上割合算定表(昭和53年分)

<省略>

別表12の2

手描友禅の売上割合算定表(昭和54年分)

<省略>

別表12の3

手描友禅の売上割合算定表(昭和55年分)

<省略>

別表13

消費支出額等について

<省略>

(注)1. 「消費支出額」は、乙第44号証の4枚目(321ページ)の「消費支出」欄の昭和53年分・54年分・55年分を同320ページの世帯人員数で除し、4(原告の世帯人員)を乗じ、かつ、12(1年分)を乗じたものである。

昭和53年分 226,471円÷3.73(人)×4(人)×12(月)=2,914,372円

昭和54年分 250,023円÷3.76(人)×4(人)×12(月)=3,191,782円

昭和55年分 249,872円÷3.81(人)×4(人)×12(月)=3,147,993円

2. 「借入金返済額」は、借入金の元本返済金額であって借入金利息の支払金額は含んでいない。

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